伊集院静さん死去 73歳 「大人の流儀」作家、作詞家としても活動が死去

情感豊かな小説やエッセーなどで知られる作家の伊集院静(いじゅういん・しずか、本名・西山忠来=にしやま・ただき)さんが24日、死去した。73歳。妻で女優の篠ひろ子(しの・ひろこ、本名・西山博子=にしやま・ひろこ)さんが同日、発表した。葬儀は近親者で営む。

1950年、山口県防府市生まれ。プロ野球選手を目指して立教大文学部に入学したが、肘を痛めて断念。卒業後、広告代理店に勤めた後、フリーランスでCMの企画やコンサートの演出などを手がけた。在日韓国人2世で74年に日本国籍を取得。女優で前妻の故夏目雅子さんとは85年に死別した。92年、篠さんと再婚した。

CMディレクターとして活躍しながら、81年に短編小説「皐月」で作家デビュー。その後、執筆活動に専念し、92年「受け月」で直木賞受賞。瀬戸内の小島にある小学校を舞台にした「機関車先生」では94年の柴田錬三郎賞、また、60年代後半の横浜を舞台に流浪する男たちを描いた「ごろごろ」で2002年に吉川英治文学賞を受賞した。14年には正岡子規と夏目漱石を題材にした評伝小説「ノボさん」で司馬遼太郎賞を受けた。16年に紫綬褒章を受章。

エッセーの名手でもあり、「大人の流儀」シリーズは発行部数が累計約200万部の大ヒット。ギャンブルや酒など豪放磊落(らいらく)な私生活に裏打ちされた文章が人気を博した。一方、作詞家としても活動し、近藤真彦さんのヒット曲「ギンギラギンにさりげなく」「愚か者」などを手がけた。

19年の都市対抗野球大会では、伊集院さん作詞、林哲司さん作・編曲の社会人野球の歌「我街(われら)の誇り」が制作され、開会式の入場行進曲として使われた。

11年から直木賞の選考委員。20年にはくも膜下出血で倒れ、手術を受けた。今年に入り、肝内胆管がんの治療を受けていた。篠さんは24日、報道各社に向けて「最期まで自分の生き方を貫き通した人生でした。強がりを言って誰にも会わずに逝ってしまった主人のわがままをどうかお許しください」とコメントした。

お悔やみメッセージを投稿してみませんか

お悔やみの言葉を残す