異なる有機化合物同士を結合させて新しい物質を作り出す「クロスカップリング」の研究で2010年にノーベル化学賞を受賞した米パデュー大特別教授の根岸英一(ねぎし・えいいち)さんが6日、死去した。85歳。同大が発表した。家族が来年に日本で埋葬する予定という。
1935年、旧満州新京(現中国・長春市)生まれ。58年に東京大工学部応用化学科を卒業すると、大手繊維メーカーの帝人に入社した。米ペンシルベニア大に留学して博士号を取得。いったんは帝人の研究員に復職したが、66年に米国に渡り、有機化合物同士を結合させる研究に力を入れた。
有機物は炭素原子を骨格にして形作られる。かつては化学反応で人工的に炭素同士を結びつけよう(有機合成)としても難しく、生物が行う生合成でしか作れないと考えられていた。多くの化学者が炭素同士を思うままに切り離したり結びつけたりする研究を重ね、結合を仲介する「触媒」と、触媒にとっての「目印」となる物質を工夫することで、炭素同士を結びつける可能性が少しずつ広がっていた。