土地本来の樹木で森を再生する植林活動に長年取り組んだ植物生態学者で横浜国立大名誉教授の宮脇昭(みやわき・あきら)さんが7月16日、脳出血のため死去した。93歳。葬儀は近親者のみで営んだ。喪主は妻ハルさん。
岡山県出身。広島文理科大(現広島大)卒で1973年横浜国大教授。96年国際生態学会会長などを務めた。
毎日新聞社が創刊135年を記念し2006年に始めた植樹キャンペーン「My Mai Treeキャンペーン」では当初から4年間にわたって、参加した市民らに現地で植樹を指導。ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんとも毎日新聞社での対談を機に親交があり、ケニアの熱帯林再生の植樹をするなど貢献した。
同キャンペーン終了後も、阪神大震災で深刻な被害があった神戸市長田区や東日本大震災で被災した宮城県南三陸町、火砕流被害20年の雲仙・普賢岳などで毎日新聞社が主催した植樹祭で指導した。
横浜国立大助手時代に2年間のドイツ留学で、土地本来の植生が病気や災害に強いなどとする理論を学び、帰国後は公害の広がりや災害の頻発、激甚化による国内環境の深刻化を予測。災害から人命を守り、動植物の生態系を育む防災環境保全林づくりの重要性を呼びかけた。
徹底した現場主義を貫き、スギやヒノキの単一の針葉樹を植林する林野庁を批判し、多様な広葉樹を中心とした苗木の栽培、植樹方法を確立した。その土地本来の樹木を調べて植える植樹方法は「宮脇方式」と呼ばれた。企業や自治体などが環境保全のために実施する植樹方法を広め、40年以上にわたり国内外の植樹指導に尽力した。
70年には著書「植物と人間」で毎日出版文化賞、06年に国際環境賞「ブループラネット賞」をそれぞれ受賞した。【山本悟】