作家・詩人の富岡多恵子さん死去 87歳 小説「波うつ土地」が死去

「波うつ土地」などの小説をはじめ、詩や評論、映画脚本と幅広く創作し、戦後日本を代表する女性作家の一人として活躍した富岡多恵子(とみおか・たえこ、本名・菅多恵子=すが・たえこ)さんが6日、老衰のため死去した。87歳。通夜は10日午後6時、告別式は11日午前9時半、静岡県伊東市川奈1256の19の法輪閣。喪主は夫で現代美術家の菅木志雄(すが・きしお)さん。

大阪市生まれ。幼いころから歌舞伎や文楽に親しみ、後に描くことになる庶民の愛憎を体得した。大阪女子大(現大阪府立大)英文科を卒業。1958年、ドライな味わいの詩集「返礼」がH氏賞を受けて詩壇に認められ、61年に「物語の明くる日」で室生犀星詩人賞を受賞した。70年代に入ると小説を書き始め、83年には代表作となる「波うつ土地」を発表。男女の既成の役割からの解放を試みた。77年に「立切れ」で川端康成文学賞、97年に「ひべるにあ島紀行」で野間文芸賞を受賞するなど、世界をシニカルにとらえる批評性が高い評価を受けた。

評論でも活躍し、国文学と民俗学の学者かつ歌人の折口信夫の謎を解読した「釋迢空(しゃくちょうくう)ノート」で2001年に毎日出版文化賞。05年「西鶴の感情」で大佛次郎賞と伊藤整文学賞。また、毎日映画コンクール日本映画作品賞を受賞した映画「心中天網島」(69年)では脚本を篠田正浩監督らと共同で手がけた。08年、日本芸術院会員。

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