スパイ小説家で英国を代表する巨匠 ジョン・ル・カレ氏、肺炎で死去 89歳が死去

英紙ガーディアンによると、「寒い国から帰ってきたスパイ」などで知られる英国の小説家、ジョン・ル・カレ(本名デービッド・コーンウェル)氏が12日、肺炎のため英イングランド南西部コーンウォールの病院で死去した。89歳。重厚な筆致で人と組織・国家の苛烈な関係を描き、スパイ小説家のジャンルを超えて第二次大戦後の英国を代表する巨匠だった。

1931年生まれ。スイスのベルン大学や英オックスフォード大学で学んだ後、英国の名門パブリックスクール・イートン校の教師などを経て、防諜(ぼうちょう)組織である英情報局保安部(MI5)、海外で情報収集活動を行う英秘密情報部(MI6)でそれぞれ勤務した。

「寒い国から帰ってきたスパイ」(63年)がベストセラーになり、以後も東西冷戦期の諜報戦を舞台にした多くの作品で知られた。

特にファンが多く、最高傑作との呼び声が高いのが、英情報部「サーカス」の幹部のジョージ・スマイリーとソ連情報機関の指揮官カーラとの対決を軸に描いた「スマイリー3部作」。最初の作品「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」は近年「裏切りのサーカス」(2011年)として映画化もされた。

作風は冒険活劇というより、組織や国家への使命などを巡ってさまざまな人物の裏切りや悲哀が描かれる深い人間ドラマが特徴だった。英国では「おそらく20世紀後半の英国における最も重要な小説家として記憶される。もはやスパイ小説家ではない」(作家イアン・マキューアン氏)、「ディケンズやオースティンと同様にみなされる作家」(英紙フィナンシャル・タイムズ)との評価を得ている。冷戦崩壊後もマフィアやイスラム過激派などを題材にした著作を次々に発表していた。【ロンドン服部正法】

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