近代日本の民衆思想史研究などで功績を残した歴史学者で東京経済大名誉教授の色川大吉(いろかわ・だいきち)さんが老衰のため死去した。96歳。葬儀は遺志で営まない。
1925年千葉県生まれ。44年、東京大在学中に学徒出陣で海軍航空隊に配属され、20歳で敗戦を迎えた。復員後、同大を卒業。中学校教師などを経て東京経済大教授となった。丹念なフィールドワークや資料の調査で、歴史の表舞台には登場しない民衆思想の研究をリードし、68年には明治初期に民間の有志らが作成した私擬憲法の一つ、「五日市憲法草案」の発見につながった。
また、75年に刊行された「ある昭和史―自分史の試み」(毎日出版文化賞)は30万部のベストセラーとなり、その後続く「自分史」ブームの源流ともなった。
「日本はこれでいいのか市民連合」の共同代表や水俣病の学術調査団の団長を務め、さらにシルクロードやチベットの踏査、反戦運動など専門の壁を越えて幅広く活躍。「活動する歴史学者」としても知られた。大学退職後も講演などで市民への発信を続けていた。
他の著書に「明治精神史」「昭和へのレクイエム 自分史最終篇」「不知火海民衆史」など。