沖縄在住で初の芥川賞 大城立裕さん死去 95歳 「カクテル・パーティー」が死去

沖縄県在住者として初の芥川賞作家となり、米軍基地が引き起こす問題など沖縄が抱える矛盾や苦しみを作品化し、県の文化行政のリーダーとしても活躍した作家の大城立裕(おおしろ・たつひろ)さんが27日、老衰のため同県北中城(きたなかぐすく)村の病院で亡くなった。95歳。葬儀は30日午後2時、同県浦添市伊奈武瀬1の7の1のいなんせ会館。喪主は長男達矢(たつや)さん。

1925年、沖縄県中城村生まれ。中国・上海の東亜同文書院大中退。米軍翻訳職、高校教師をへて琉球政府、沖縄県庁に勤務した。

67年、「新沖縄文学」に「カクテル・パーティー」を発表。作品の舞台は米国統治下の沖縄。日本人、沖縄人、米国人の親善パーティー中に沖縄人の主人公の娘が米兵から性的暴行を受ける。米軍人らとの欺まんに満ちた親睦は崩壊。日米、日琉などの新たな関係を問い直す画期的な小説として高く評価され、沖縄県初の芥川賞を受けた。

小説や戯曲など沖縄方言の作品化を試みる一方、日本政府が琉球王国を解体して沖縄県を設置した経緯をたどる「小説 琉球処分」を68年に刊行。40年余り、広く読まれるに至らなかったが、米軍普天間飛行場の移設問題で揺れる2010年に文庫化され、一躍注目された。

93年の「日の果てから」は沖縄戦における刑務所の移動がテーマ。米軍の上陸で刑務所の看守や囚人は一般人とともに南へ逃げる。戸籍原簿も土地登記簿も失われ、社会秩序や文化全般が破壊されるプロセスを克明に描き、平林たい子文学賞を受けた。

公務員生活は39年に及び、琉球政府通商課長、沖縄史料編集所長などを経て、83年に県立博物館長に就任。86年までの在任中、玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)生誕三百周年記念事業会長を務め、小説「花の碑」、沖縄芝居「嵐花」を書くなど、琉球古典劇・組踊の創始者朝薫の顕彰に尽力した。

02年、「大城立裕全集」(全13巻、勉誠出版)を刊行。15年には自身初の私小説「レールの向こう」で川端康成文学賞を受賞して健在ぶりを示した。

「カクテル・パーティー」(文芸春秋、1967年)

「小説 琉球処分」(講談社、1968年)

「現地からの報告・沖縄」(月刊ペン社、1969年)

「恩讐(おんしゅう)の日本」(講談社、1972年)

「まぼろしの祖国」(講談社、1978年)

「対馬丸」(共著、理論社、1982年)

「神女(のろ)」(筑摩書房、1985年)

「天女死すとも」(岩波書店、1987年)

「沖縄演劇の魅力」(沖縄タイムス社、1990年)

「日の果てから」(新潮社、1993年)

「かがやける荒野」(新潮社、1995年)

「恋を売る家」(新潮社、1998年)

「花の幻――琉球組踊十番」(カモミール社、2007年)

「普天間よ」(新潮社、2011年)

「真北風(まにし)が吹けば――琉球組踊続十番」(K&Kプレス、2011年)

「レールの向こう」(新潮社、2015年)

「焼け跡の高校教師」(集英社、2020年)

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