自らが体験した無差別爆撃の記録で知られる作家で、東京大空襲・戦災資料センター名誉館長の早乙女勝元(さおとめ・かつもと)さんが10日、老衰のため死去した。90歳。葬儀は後日行う予定。
1932年東京生まれ。12歳だった45年3月10日、およそ10万人が亡くなった米軍の東京大空襲に遭った。敗戦後は町工場で働きながら作家を目指し、「下町の故郷」「ハモニカ工場」などを発表。71年に刊行されたルポルタージュ「東京大空襲」はロングセラーとなった。70年に「東京空襲を記録する会」を結成。同会は空襲体験記や米側資料などを収集し「東京大空襲・戦災誌」(全5巻)を刊行、菊池寛賞を受賞した。2002年には同センターの初代館長に、10年には「全国空襲被害者連絡協議会」の共同代表にそれぞれ就任。空襲体験の聞き取りと語り部活動や、未補償の民間人被害者救済活動などにも貢献した。
他の著書は「東京が燃えた日」「蛍の唄」「アンネ・フランク」など多数。空襲を題材にした絵本「猫は生きている」など、幅広い読者に戦争の悲惨さと平和の尊さを訴え続けた。