詩の専門出版社「思潮社」の元代表で、現代詩の興隆に尽力した小田久郎(おだ・きゅうろう)さんが2022年1月18日、肺炎のため90歳で死去していたことが分かった。同社が今月28日発売の月刊誌「現代詩手帖(てちょう)」4月号で発表した。葬儀は近親者で営んだ。お別れの会を後日開く。喪主は妻満寿美(ますみ)さん。
東京都生まれ。早稲田大文学部卒。投稿雑誌「文章倶楽部」の編集者を経て、1956年に思潮社を設立。自らも詩を書き、詩集「一〇枚の地図」(56年)を出したが、以後は編集に専念した。59年に「現代詩手帖」を創刊し、戦後詩ブームをリード。68年に始めた廉価版の選詩集シリーズ「現代詩文庫」もヒットし、安保闘争や大学紛争を背景とする60~70年代の詩壇の隆盛を支えた。その業績により同社は91年に菊池寛賞を受賞。95年には自著「戦後詩壇私史」で大佛次郎賞を受賞。21年に歴程賞を受けた。また、高見順賞や鮎川信夫賞など権威ある現代詩の賞の創設でも中心的な役割を果たした。
遺族によると、故人の遺志で死去直後の発表を控えていたという。