12月31日に死去した前ローマ教皇ベネディクト16世は、バチカン(ローマ教皇庁)がスキャンダルに揺れる中、異例の生前退位により、伝統的な終身在位制に「風穴」を開けた。保守的な教義を前面に打ち出す一方で、他宗教との対話やITを活用した情報発信を通じて「開かれた教会」の実現にも腐心した。
ドイツの大学で神学を教えた学者肌で、カトリック教会トップとしての統治能力には疑問符が付いた。
教皇デビューはつまずきから始まった。就任の翌2006年にドイツの大学で講演した際、「ジハード(聖戦)は神に反する」と述べた。さらに、イスラム教の預言者ムハンマドが「邪悪と残酷さをもたらした」とのビザンチン帝国皇帝の言葉を引用し、イスラム世界の反発を招いた。
だが、その後、イスラム諸国との関係改善に乗り出し、トルコ訪問ではモスク(イスラム礼拝堂)を訪れ、大歓迎を受けた。09年にはロシアとバチカンの外交関係を樹立し、11世紀に分裂した東方正教会との和解に道筋を付けた。
先代のヨハネ・パウロ2世に比べ、カリスマ性に欠けると言われてきた。バチカン高官は両者の相違について…