「もう一度めぐみを抱きしめたい」。北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父滋さんが5日、死去した。半生をかけ娘の救出を訴え続けた父の願いはついに届かなかった。
1977年秋、中学1年生だっためぐみさんの13歳の誕生日会。カメラが趣味の滋さんは、親友に囲まれためぐみさんをうれしそうに写真に収めた。それから約1カ月後の11月15日、めぐみさんはバドミントン部の練習を終え帰宅する途中に、突然姿を消した。滋さんはあの日のことを「家族写真を撮って当たり前に過ぎていった毎日が幸せだった。あの日、すべてが変わりました」と語っていた。
めぐみさんの失踪後、自宅の電話には誘拐を疑った警察の逆探知用装置が取り付けられ、捜査員が出入りするようになった。就寝時は電話をそばに置き、出勤前は手がかりになるものが漂着しているかもしれないと自宅近くの海岸を歩いた。いつ戻ってもいいように玄関には明かりをともし、テレビの「尋ね人」のコーナーで情報提供を呼びかけた。だが、めぐみさんにつながる情報は何も得られなかった。