ドカベン・野球狂の詩…球児・監督の支えに 水島新司さんの愛情が死去

10日、死去した漫画家の水島新司さんは「ドカベン」をはじめとする野球漫画でファンを楽しませただけでなく、幅広い世代の球児を励ました。野球の発展を願う姿勢は球界関係者からも信頼された。

高校野球が題材の「ドカベン」は、神奈川県の「明訓高校」が舞台。主人公で強打者の捕手、山田太郎や、とんでもない悪球を本塁打にする岩鬼正美、「秘打・白鳥の湖」など華麗で不思議な打法を見せる殿馬一人ら個性豊かな選手が人気に。プロ野球・南海などの選手として活躍した故香川伸行さんは、山田太郎そっくりの大きな体形と豪快なスイングで「ドカベン」の愛称で長年親しまれた。

セ・リーグの架空の球団「東京メッツ」を舞台にした「野球狂の詩(うた)」では、女性投手・水原勇気が活躍。時代の一歩先を描いた。後に独立リーグに入団した女子プロ野球選手には「野球狂の詩」に憧れて野球を始めた選手もいるなど現実に影響を与えた。

「ドカベン」のモデルとなった新潟明訓高校(新潟市)の監督として、春夏通算8回の甲子園出場を果たした佐藤和也さん(65)は、訃報を受け「非常に残念です」と話した。1991年夏、同校が初めて甲子園に出場した際、水島さんから電話で「よくぞ本物の『明訓』を出してくれた」と声をかけられたという。佐藤さんは「『明訓が本当に新潟にあるんだと知らしめたい』と思ったのも監督を引き受けた理由の一つ」と話す。部員は「漫画に追いつこう」という気概で練習に取り組んだといい、同校は2010年、夏の甲子園で8強入りした。

水島さんは独立リーグのアドバイザーを務めるなど野球振興にも取り組んだ。05年に紫綬褒章を受けた際には「12球団の選手と受章した気持ち」と喜び、20年12月に漫画家引退を表明した時には「これからの漫画界、野球界の発展を心よりお祈り申し上げます」とコメント。最期まで野球と漫画への愛情を持ち続けた。【屋代尚則、露木陽介】

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